「あの時は楽しかったなあ」と思い出される時を人は誰でも持っていましょう。長い(あるいは短い)生涯で何度か。人生の最も貴重なもの、本質的な部分として。凝縮された人生といっていい。誰しもそういう時を持っており、またそういう時を思い出す時を持っております。本当は、その時は苦しい時でもあったんでしょうけれど、不思議にあの時は「楽しかった」というかたちで思い出されてきますね。しんどくはあったが、あの時、私は私であった。私の魂は、さまたげを受けずに、あるいはむしろ、受けたさまたげを排除しながら、すくすくと伸び育っていったと今にして思う。「楽しい」とは、このようにして魂がさまたげを排除しながら伸び育ってゆく時の充実し満たされた情念です。 (内田義彦『読書と社会科学』)
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