<IPO準備における内部監査>内部監査の外注、内部監査室長の兼任は上場審査において問題となる?

◾️上場審査では・・・
結論として、内部監査の外注、内部監査室長の兼任は、それぞれ必要な手当を行うことで、上場審査においては問題にならないと考えられます。

東証マザーズ「新規上場の手引き Ⅳ上場審査の内容 3企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性(規程214条第1項第3号)基準の内容・審査のポイント(p.72)」には、
組織運営や規程の遵守状況についてチェックを行う内部監査機能の確認の際の考え方(留意ポイント)の記載が見られます。
・内部監査を外注する場合は、「実効性の高い内部監査が実施されるよう、会社の現状、業務内容、問題意識などを適切に伝えたりするなど主体的に関与」することで、申請会社が行う計画・監査内容の策定や改善方法の決定等といった主要な業務を、
ノウハウやリソースの関係から「包括的にアウトソース」することができると考えられます。

・内部監査専門の組織の設置については、他の事業部門に属する人員が内部監査を担当する場合、当該担当者の属する部門に対する内部監査が、自己監査とならないように手当てされていることで問題にならないと考えられます。
例えば、経理部門の人員が内部監査人を兼任する場合、経理部門の内部監査を別部門が実施することで、形式的には自己監査を避けることができます。


◾️内部監査基準(一般社団法人日本内部監査協会) では・・・
監査法人の会計監査、監査役の監査の独立性は位置付けからイメージしやすい一方で、アシュアランス業務とアドバイザリー業務を担う社内における内部監査の独立性が何から独立していることが求められているのかは、内部監査基準に記載が見られます。
それは、「監査対象業務」と「経営者」からの独立性となります。

内部監査基準の第2章 「内部監査の独立性と組織上の位置づけ」において、「内部監査人は、以前に責任を負った業務について、特別のやむを得ない事情がある場合を除き、少なくとも1年間は、当該業務に対するアシュアランス業務を行ってはならない。」(2.1.4)とし、
監査対象業務からの独立性の確保が図られています。
また、組織上の位置づけについては、「内部監査部門は、組織上、最高経営者に直属し、職務上取締役会から指示を受け、同時に、取締役会および監査役(会)または監査委員会への報告経路を確保しなければならない。」(2.2.1)とし、
内部監査室長が経営者に報告すると同時に、取締役会及び監査役会に対しても報告を行うことにより、経営者不正の隠蔽等の防止が図られています。


◾️上場準備中の実務では・・・
内部監査の経験者が社内にいることはあまりない点、転職市場に内部監査部門経験者の数が少ない点、IPO準備中はヒトとカネの余裕が基本的にない点から、外注と兼任の組み合わせが有効なケースが多いと考えられます。

具体的には、
・社内の兼任者による内部監査室長(社長及び会社の事業や実務、過去からの経緯等を把握しており社内の信頼を得ている人)と、
・内部監査人員(内部監査室長とは異なる部門の人)に、
・社外の専門家(アウトソーシング会社)を加えた
体制が現実的かと考えられます。

上場準備中においては兼任者である社内リソースの活用と、アウトソーシング会社を利用した内部監査手法等のノウハウやリソースをカバーにより、円滑かつ一定水準以上の品質を確保した内部監査の実施とコストの節約、また上場後に備えた人材育成や社内におけるナレッジの蓄積が
期待できます。
これはコソーシングによる体制構築となりますが、IPO実績のあるアウトソーシング会社の担当者と決算財務報告に関する知識を有する人員が経理部門以外にいると、スムーズに進むと考えられます。

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